【142話】閑話/ある中国旅行                               もうかれこれ十年ほど前の中国旅行の一こまです。 同行六人。関空で初対面の挨拶を交わして、上海行きに乗り込みました。  中国人スチュワーデス(キャビンアテンダント)の心  「いつもながらとんぼ返りきついわ。今日もビジネスシートのお客さん日本人ばかり。日本語わからないから、これ大変疲れるのよ。日本人は中国が同じ漢字の国と思てるから、すぐ紙と鉛筆持って来い言うて、下手な漢字並べて、解るか?解るか?と聞くけど、結局大した話でないのよ。こんなの相手してたら、ほかの仕事出来ないわ。」  『飲み物何にしますか、ビールですか、お茶ですか、お代わりいりませんか。』  「そこの関西訛りのきつい北京語少し話す人、何言うてるか。もう少しニコリと笑えと思てるかもしれないけど、失礼ね。私これでも中国では超エリートよ。おかしくもない時に笑えたものじゃないの。日本人はサービス過剰よ。それにサービスをはき違えているわ。」  『お食事お持ちしました。肉にします。魚にします。あなたはどちらですか。あなたは・・・・・』  「わたしに何も聞かないのかって。もう残りは魚しか残っていないのよ。聞く必要ないでしょ。さあさあ、早く食べてくださいね。片付け終われば上海だわ。」  上海空港に無事到着しました。夕食を空港内のレストランで摂ることになりました。  レストランのウェイトレスの心  『ここの親子丼本物かとのお尋ねですか。ハイ、経営者は日本人よ、日本で食べると同じ味よ。』  「ホントか、ホントかとうるさい人ね。あなた、かなり疑り深いね。あまりひつこいと嫌われるよ。エッ、この卵はこの鶏が産んだ卵かって。それは違うでしょう。じゃー、他人丼じゃないかって。面白いこと言う人ね。でも馬鹿みたい。」  「え、まだあるの。このビールのラベル剥がすんですか。面倒なこと言う人ね。旅の恥はかき捨てて言うけど、解ったわ。少しお待ちくださいね。」  上海空港から寧波(ニンポー)へ向かうことになりましたが、搭乗機の到着が遅れて、出発時間がわからないとのことです。  待合室の中国人男性の心  「どうにもならないことを騒ぐの駄目ね。すべては時間が解決するのよ。後で読む本を先に読むことよ。することの順番替えるだけ。そこの日本人、いらいらせかせか歩き回らないで。落ち着いて本読めないよ。困るあるね。」  待合室の中国人女性の心  「三時間待ってやっと搭乗だわ、今晩の睡眠減ったわ。そこの列、真ん中少し空いてるわ。はい、ごめんなさいね。なぜ、この日本人私を睨むの。あなた、ここ空けていたじゃない。中国にはいっぱい人がいるの、無駄な隙間もったいないね。中国の国広いって、でも住むことのできる場所少しね。時間大切、場所大切。ほんとよ。」

           


 もうかれこれ二十年ほど前の中国旅行の一こまです。同行六人。関空で初対面の挨拶を交わして、上海行きに乗り込みました。

 中国人スチュワーデス(キャビンアテンダント)の心

 「いつもながらとんぼ返りきついわ。今日もビジネスシートのお客さん日本人ばかり。日本語わからないから、これ大変疲れるのよ。日本人は中国が同じ漢字の国と思てるから、すぐ紙と鉛筆持って来い言うて、下手な漢字並べて、解るか?解るか?と聞くけど、結局大した話でないのよ。こんなの相手してたら、ほかの仕事出来ないわ。」

 『飲み物何にしますか、ビールですか、お茶ですか、お代わりいりませんか。』

 「そこの関西訛りのきつい北京語少し話す人、何言うてるか。もう少しニコリと笑えと思てるかもしれないけど、失礼ね。私これでも中国では超エリートよ。おかしくもない時に笑えたものじゃないの。日本人はサービス過剰よ。それにサービスをはき違えているわ。」

 『お食事お持ちしました。肉にします。魚にします。あなたはどちらですか。あなたは・・・・・』

 「わたしに何も聞かないのかって。もう残りは魚しか残っていないのよ。聞く必要ないでしょ。さあさあ、早く食べてくださいね。片付け終われば上海だわ。」

 上海空港に無事到着しました。夕食を空港内のレストランで摂ることになりました。

 レストランのウェイトレスの心

 『ここの親子丼本物かとのお尋ねですか。ハイ、経営者は日本人よ、日本で食べると同じ味よ。』

 「ホントか、ホントかとうるさい人ね。あなた、かなり疑り深いね。あまりひつこいと嫌われるよ。エッ、この卵はこの鶏が産んだ卵かって。それは違うでしょう。じゃー、他人丼じゃないかって。面白いこと言う人ね。でも馬鹿みたい。」

 「え、まだあるの。このビールのラベル剥がすんですか。面倒なこと言う人ね。旅の恥はかき捨てて言うけど、解ったわ。少しお待ちくださいね。」

 上海空港から寧波(ニンポー)へ向かうことになりましたが、搭乗機の到着が遅れて、出発時間がわからないとのことです。

 待合室の中国人男性の心

 「どうにもならないことを騒ぐの駄目ね。すべては時間が解決するのよ。後で読む本を先に読むことよ。することの順番替えるだけ。そこの日本人、いらいらせかせか歩き回らないで。落ち着いて本読めないよ。困るあるね。」

 待合室の中国人女性の心

 「三時間待ってやっと搭乗だわ、今晩の睡眠減ったわ。そこの列、真ん中少し空いてるわ。はい、ごめんなさいね。なぜ、この日本人私を睨むの。あなた、ここ空けていたじゃない。中国にはいっぱい人がいるの、無駄な隙間もったいないね。中国の国広いって、でも山や砂漠で住むことのできる場所少しね。時間大切、場所大切。ほんとよ。」

 寧波空港から、街灯もない真っ暗な街道を三時間、警笛を鳴らし、ヘッドライトのビームを上げっぱなしで、周りの人や車を蹴散らかすように仙居(センキョ)まで爆走しました。

 深夜にホテルに到着し、恐怖のドライブの疲れもあって、すぐに爆睡です。

 電話のモーニングコールで起こされ、欠伸を噛み殺し、手探りでサイドベッドの電気のスイッチを押しましたが、電燈がともりません。起き上がって薄暗闇のなか、部屋のあちこちのスイッチを押してみましたがそれも駄目。ようやく二十三時間の時差ボケの頭にも状況が呑み込めました。停電です。

 蝋燭一つがともる階段をそろそろと手すりを持ってロビーにおりました。

 明るくなってきたロビーでは、ホテルの従業員が仕事を始めました。

 窓ふきをしている従業員の心

 「今日も一日窓ふきだわ。えッ、私のことですか。ゴミが落ちてるっていうのですか。拾えって。わたし、ゴミ拾うの仕事じゃないの。それ別の人の仕事よ。ついでじゃないかって。何言ってんの。ひとの仕事取る悪いことよ。中国は人いっぱいいるの。でも、仕事は少ないわ。解かります。」

 あれから三十年経ちました。中国は大変貌を遂げようとしています。でも、こんな風景は広い中国のことですから、今でもどこかで見かけられるかも知れません。(了)


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