【134話】猫の妙薬/マタタビ(木天寥)
もうかれこれ二十五年も経ったかと思いますが、ある動物用品の社長さんから、猫の「爪研ぎ器」を作るので、「マタタビ」の粉末を世話してほしいと頼まれたことがあります。
その機器は、細長い箱の中に、斜めに木の板が渡してあって、その上端にマタタビ入りの団子を置いておくだけの簡単なものなのですが、猫がマタタビを取ろうと板を駆け上がる時に、木を引っ掻き、爪を研ぐという代物でした。何とこれを五千台以上売ったというから驚きです。
マタタビには、ネコ科の動物の大脳と延髄とをマヒさせ、恍惚とさせる中性のマタタビラクトンおよび塩基性のアクチニジンという成分が入っています。効果がてきめんなことを表わすのに「猫にまたたび、お女郎に小判」といわれるのは、このことからきています。この効果はネコ科であるライオンやトラにも当然当てはまります。
木天寥は、体を温め血行を良くし、強心、利尿作用がありますので、冷え症や腰痛、リューマチ、神経痛などに用います。
ところで、この「またたび」という変わった名前の由来に は古い言い伝えがあります。
昔、弘法大師が全国行脚をしておられたとき、道なき道の 険しい山中で難渋し、これ以上歩けなくなって、崩れるようにその場に倒れこんでしまいました。ふと空を見上げますと 、木々に絡みついた蔓に、歪な実がなっているのが眼にとまりました。ひとつをもいで口に運んだところ、見る間に体の中から不思議な力が湧き起こってきて、また旅を続けられたといいます。
かといって、ライオンや虎に襲われた時、「これが目に入らぬか!」と、正露丸を使う気にはなれません。


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