【132話】万葉の歌と植物/雄略天皇と菜を摘む乙女
万葉集は、雄略天皇の次の歌で幕を開けます。
この岳に 菜採ます児 家聞かな 告らさね
そらみつ 大和の国は
おしなべて われこそ居れ しきなべて われこそ座せ
われにこそは 告らめ 家をも名をも
籠は良い籠を持ち、へらも良いへらを持って、この丘で菜を摘んでいる娘よ あなたの家はどこですか
言っておくれよ この大和の国は全て私が治めているのです その私がここにいるのです
私には教えてくれるね おまえの家をも名前をも
この歌が詠まれたのは、奈良県桜井市にある泊瀬朝倉宮あたりとされています。この歌から雄略天皇の誇らしげな声が聞こえてくるのですが、私には、小高い丘陵に乙女がひとり、食材にする山菜か薬草を摘んでいる姿にほのぼのとした古代の生活が垣間見えてうれしくなるのです。
現代人は山野に出て野草を摘むことが少なくなってきました。 草木の芽生えに春を感じ、食卓に上がった若葉の味に英気をもらい、咲き出した花の色と香りに心の安らぎを覚える自然との付き合いは、ストレスに押しつぶされそうになっている現代人には必要なことかもしれません。
これらおなじみの花たちの半分は近年海外から来た移住者ですが、それでも古来からの日本の花たちを万葉の乙女が摘んでいたと思うと心が騒ぎます。

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