【130話】一杯のお茶 

            

 成人病検診を受けました。その結果、胃部に陥凹性病変があるということで再検査することになりました。
 陥凹性病変をネットで調べたら、胃ガン、胃潰瘍の疑いありということです。落ち込みました。

一杯のお茶が末期の水のように思えて、そういえば最近なんだかみぞおちのあたりが重苦しいし、脂っこい物に箸がいきません。

 胃の運動を抑制する筋肉注射を打たれて、バリウムを飲まされ、右を向け、左を横にしろ、うつ伏せになれと、いろんな角度で撮影され、最後はこれでもかと言わんばっかりに、アームの先に付いた握り拳のような球体でぎゅーぎゅーと押さえつけられました。挙げ句の果て、ボールの上に全体重を乗せて撮影終了となりましたが、撮影中、技師と医師との会話が聞こえてきました。
「変やなあ」
「もういっぺん撮ろか」
「やはり違うで」

 しばらく待たされて、診察室に呼ばれましたが、医者が首を傾げながらこう言います。
 「長いこといろんな胃の写真見てきたけど、お宅のん変わってますなあ。幽門から十二指腸あたりに少し凹んだところがあって今回の再診になったんやけど、よう見ると最初の十二指腸部門が二つにくびれてますのや。」
 「先生、それ問題だすか。」
 「支障はないけど、これ本当に珍しいで。」
 「ほなら、学会発表でもしはったらどうだす。」
 「このフィルム貴重や。永久保存版や。」
 「そんなことより、結局どうでんねん。」
 「問題ありません。以前の胃潰瘍も自然治癒力で完全修復されてます。でも、珍しいなあ。」
 「そうでっか。よかったわ。まだ遺言書いてないし、余生は珍しい十二指腸の所有者として、誇りを持って生きていきまっさ。」

 ほっとした女房の顔を見て飲んだ一杯のお茶の美味しかったこと。健康って本当によろしいものですね。

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