【129話】古本に見つけた「生」の語源

 

 時間があれば、よく古本屋に出かけます。今年も初出勤の日の帰りに立ち寄りました。いつものように、さりげなく眺めていると、水上静夫著の「漢字語源物語(からだと性の文字学)」が目に留まり、パラパラとページを捲っていくと、「生」の文字が飛び込んできました。これは、「生のブログ」を書いているものにとっては読むべき本と思い購入しました。

 古本には新本と違った魅力があります。新本の新しいインクのにおいと比べると、カビ臭いシミのにおいがします。そして、いろんな過去が蘇ります。今回購入の定価二〇〇〇円のこの本は、一九八四年(昭和五十九年)八月二十日)発行の初版本です。古本は九八〇円でした。最初の購入者は八月二十九日に四日市市一番街の文化センター「白揚」で買い求めています。レシートが奥付に貼ってありました。本の下の部分を見ますと、結構黒くなっていて、何回も読まれた形跡があります。それにしても帯のついた表紙は汚れも少なく、カバーを付けたまま読まれていたのでしょう。二七六ページと二七七ページの間に「志の使用の方法P.276()P.277(初)」と落ちついた字のメモ書きがはさんであります。このうす緑のメモ書きはA4サイズを四枚に切り分けたもので、医院か薬局のチラシか何かの裏を使っています。「・・・が脳を圧迫」「・・・生理による・・・の為の節食」「・・・のご相談は」との文字が見えます。さらに、一九八三年日曜日の新聞記事の切り抜きがはさんであります。松村暎著「中国故事つれづれ草」の評論記事です。裏面記事に愛知県多郡武豊町の五八歳の主婦が金木犀の花が咲いたとの投稿記事があることから、九月から十月ごろの新聞ということになります。

 以上のことから、三重県四日市市に在住の中国の古典に興味を持たれている非常に几帳面な性格の漢方薬局の薬剤師さんと推察しました。

  さて、私といえば当時、四〇歳を出たばかりで、北海道から九州まで全国を漢方の講演と営業に回っていた時期でした。「歌は世に連れ、世は歌に連れ」と言われますが、当時の自分を振り返ると、はやっていた歌の記憶より、どんな本を読んでいたかの記憶のほうが確かです。今回のこの本との出会いは、全国を飛び回っていた時代を思い起こさせてくれました。

 それでは、「漢字語源物語(からだと性の文字学)」から、「生」の字の語源ですが、次ページにあるように「草木の芽の伸びるさまを象った象形文字です。植物と動物の違いはあっても全く同じ現象として、「生まれる」は、今日お産の意味に使われています。「産」の字にも「生」があり、同じ意味を持っています。

 出産にまつわる文字として、いくつかの植物が紹介されていますので併せてご紹介します。出産に付きものの「つわりの特効薬」の「某」「桃」「李」「梅」「杏」の話です。

 中国では昔から酸っぱい果物は「つわり」の特効薬でした。「某」の字には「酸果」という意味があります。 「桃」は木へんに「兆」で妊娠の兆しです。「李」は木に子で、やはり子どものできる前触れです。「梅」は木へんに母で、母になることの木です。「杏」は木へんに口ですが、口は母から訛したものと言われています。 このように、バラ科のこれらの植物の実はみな酸っぱく、子ができ母となるための果物でした。なお、桃は今の甘い桃ではなく、原種の「巴旦杏(ハタンキョウ)」と呼ばれる酸っぱい桃といわれています。


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