【128話】血液沸騰
かつて、中国の広西チワン族自治区の桂林を真夏に旅したことがあります。朝の天気予報で、北のハルピンから、北京、南京、上海、福州と二〇度半ばの気温が、三〇度を越し、桂林で四〇度との予想を聞いて、うんざりしました。ホテルから見える水田のそばで、けだるそうに水牛が水に浸かっていますし、木陰では農夫が畑を打つ手を休めています。中には、麦わら帽子を顔において朝寝の真最中の人もいて、こんなに暑くては仕事とどころではないことを実感しました。ただ、私には、この暑さでは朝寝もできませんでした。気温が体温を超えると血液が沸き立つようで、体調はおかしくなります。
以前、南太平洋諸島の植物調査に出かけた人がいました。海岸に出てみると、ヤシの木陰で人々はゴロゴロと寝そべり、たまに舟を出して、魚や貝を採り、食事が終われば、またゴロリと寝そべります。
こんなのんびりした生活もいいものだと思いながら、ジャングルのほうに目をやると、木に葛がからみついているのが見えました。そして、その根もとを掘ると立派な葛根(クズデンプン、生薬の原料)が掘り出せました。
早速に、島の役所に行き、時間を持て余している島人に葛根を掘らせ、産業化することを提言しました。これに対して、市の職員は微笑みながら、こう言いました。
「お話はありがたいのですが、彼らはのんびりしているわけではありません。自分たちに必要なだけの食料を調達し、あとは暑さを凌いで快適に暮らしてきた昔ながらの島の生活を観光客にお見せするための仕事をしているのです。」
地球温暖化が進んでいます。日本はもう以前の温帯地域ではありません。亜熱帯の様相を呈しています。これからの生活スタイルを考える時がきているようです。

コメント
コメントを投稿