【123話】漢薬の生姜・乾姜の基原と品質の諸問題(2)/日局ショウキョウと漢薬/生姜・乾姜の名称・生姜と乾姜の薬能
日局ショウキョウと漢薬/生姜・乾姜の名称
日局ショウキョウはショウガ Zingiber officinale ROSCOE(Zingiberaceae) の根茎と定められ、漢名として「生姜」と「乾生姜」の名前が併記されています。一般に、日本においては、新鮮ショウガ根茎を「生姜」、乾燥したショウガを「乾生姜」、蒸してから乾燥したものを「乾姜」と称して用いていることからしますと、日局ショウキョウは「乾生姜」に相当します。そして,日本の漢方,中医学で使用される生姜、乾姜は,中国では「生姜」を生姜、「乾生姜」を乾姜として、日本では「生姜」又は「生姜」の1/3~1/4の「乾生姜」を生姜、、「乾生姜」又は「乾姜」を乾姜として用いてます.(表2)
このように、日中において、生姜・乾姜には用法、名称の違いがあり問題のあるところでです。表3に、一般用漢方処方(210処方)の生姜・乾姜含有処方をあげましたが、
表2 Zingiber officinale を基原とする生薬
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日局
d) |
日本漢方 e) |
中医学 f) |
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「生 姜」a) |
- |
生姜 |
生姜 |
生姜 |
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「乾生姜」b) |
ショウキョウ |
乾姜 |
乾姜 |
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「乾 姜」c) |
― |
乾姜 |
(別規定) |
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a:生(ナマ)の
Zingiber officinale の根茎
b:乾燥した Z. officinale の根茎
c:蒸して乾燥した Z. officinale の根茎
d:14改正 日本薬局方
e:現代,日本で行われている中国伝統医学(漢方医学)
f:現代,中国における中国伝統医学(中医学)
表3 生姜・乾姜を含有する一般用漢方210処方
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生姜を含有する処方 |
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生姜に限る |
茯苓沢瀉湯 |
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生姜 |
黄耆建中湯 加味平胃散 帰耆建中湯 桂枝湯 桂枝加黄耆湯 桂枝加葛根湯 桂枝加厚朴杏仁湯 桂枝加芍薬生姜人参湯 桂枝加芍薬湯 桂枝加朮附湯 桂枝加苓朮附湯 桂枝加龍骨牡蠣湯 啓脾湯 香砂平胃散 香砂六君子湯 厚朴生姜半夏人参甘草湯 呉茱萸湯 柴陥湯 柴胡加竜骨牡蠣湯 柴芍六君子湯 柴苓湯 滋陰降火湯 四君子湯 柿蒂湯 十味敗毒湯 小建中湯 小柴胡湯 小柴胡湯合半夏厚朴湯 小柴胡湯加桔梗石膏 小半夏加茯苓湯 升麻葛根湯 清肌安蛔湯 清湿化痰湯 清上痛湯 疎経活血湯 蘇子降気湯 大柴胡湯 竹茹温膽湯 当帰建中湯 独活葛根湯 当帰四逆加呉茱萸生姜湯 二陳湯 排膿湯 八味逍遥散 茯苓飲 半夏厚朴湯 不換金正気散 茯苓飲加半夏 茯苓飲合半夏厚朴湯 伏竜肝湯 分消湯 実脾飲 防已黄耆湯 防風通聖散 補肺湯 六君子湯 |
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乾生姜 |
胃苓湯 延年半夏湯 化食養脾湯 藿香正気散 葛根湯加芎辛夷 葛根湯 加味温胆湯 加味逍遥散 加味逍遥散合四物湯 帰脾湯 芎帰調血飲 芎帰調血飲第一加減 荊防敗毒散 鶏鳴散加茯苓 甲字湯 香砂養胃湯 香蘇散 五積散 柴胡桂枝湯 逍遥散 釣藤散 二朮湯 平胃散 補中益気湯 |
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乾生姜(又は生姜) |
温経湯 加味帰脾湯 |
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生姜(又は乾生姜) |
温胆湯 桂枝加芍薬大黄湯 炙甘草湯 清肺湯 |
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生姜(又は日局ショウキョウ) |
桂麻各半湯 |
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生姜(又は乾姜) |
参蘇飲 |
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乾姜を含有する処方 |
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乾姜に限る |
乾姜人参半夏丸 人参湯 |
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乾姜(生姜不可) |
甘草瀉心湯 桂枝人参湯 柴胡桂枝乾姜湯 当帰湯 半夏瀉心湯 苓桂朮甘湯 |
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乾姜 |
黄連湯 堅中湯 小青龍湯 小青龍湯加石膏 椒梅湯 大建中湯 小青龍湯合麻杏甘石湯 |
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生姜と乾姜の両方を含有する処方 |
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乾姜と生姜 |
半夏白朮天麻湯 |
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乾姜(乾生姜不可)と生姜 |
生姜瀉心湯 |
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生姜と乾姜が薬効に差がなく、単に名称の違いによるのであれば問題はないのですが、生姜と乾姜の両方を含有する処方があることから、その違いは明らかで、従って、両生薬の違いを明らかにする事が必要です。
生姜と乾姜の薬能
生姜・乾姜の薬能は、「神農本草経」(BC200-AC200)中品に「乾姜主胸満、逆上気、温中、止血出汗、通風湿痺、腸澼下痢」と記し、「生者尤良」として「久服去臭気、通神明」とあるのが、初めて古典に見える記載です。
このことは、当時既に生(ナマ)のものが入手し難い時のために、乾姜が考案されていたが、まだ乾姜と生姜の薬能上の区別がされていなかったと考えられます。
初めて、乾姜と生姜が独立して記載されたのは後漢の「名医別録」で、「寒冷腹痛、霍乱、脹満、風邪、諸毒、皮膚間結気、止唾血」と乾姜の薬能をあげ、「主傷寒、頭痛、鼻塞、止嘔吐」と生姜の薬能をあげています。長い時代の使用経験を得て、生姜(ナマのもの)と乾姜(干したもの)の薬効が区別されてきたのです。
「千金翼方」(唐)には「治風湿痺、腰背固冷、腹痛、脹満、嘔吐」の乾姜に対し、生姜は「汗出」のみが記載されています。
「薬性論」(唐)には、乾姜は「治腰腎中疼冷、通四肢関節、開五臓六腑、去夜多小便」と述べられ、生姜については「主痰水気、下気」としています。
一方、日本では徳川中期の「一本堂薬撰」で「止嘔、開胃、発汗、可互相通用」と乾姜と生姜の共通の薬効を述べた後に、「嘔家生姜尤良」と生姜は嘔吐の聖薬であるとし、「挽回元気、温中、止瀉」は乾姜でなければならないとしました。
次いで、「薬徴」において、乾姜の主治は「結滞水毒」、「嘔吐、咳、下痢、厥冷、煩燥、腹痛、胸痛、腰痛」を旁治としました。そして、生姜の主治を「嘔吐」としました。
これらの書籍を含めた臨床経験から推考できる生姜・乾姜の薬効を表4にまとめました。尚、これら薬効については、ショウガまたは市場品生薬(乾生姜、乾姜)中に含まれる辛味成分、精油成分の薬理学的研究が数多く報告されています。
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生姜の効能 |
乾姜の効能 |
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調味、解毒作用 |
◎ |
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発表(発汗)作用 |
◎ |
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鎮嘔、鎮作用 |
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◎ |
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去痰、鎮咳作用 |
△ |
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鎮痛作用 |
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◎ |
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気の滞り(気鬱)を巡らす作用 |
◎ |
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活血(微小循環改善)作用 |
△ |
△ |
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温中作用 |
△ |
◎ |
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止瀉作用 |
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◎ |
◎:主効能、△:効能
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