【118】インフルエンザと麻黄湯
今冬はインフルエンザの大流行です。そこで、インフルエンザに効く漢方薬「麻黄湯」についてお話をいたします。
「麻黄湯」はエキス剤又は煎剤として、医療用に7社7品目、一般用に17社22品目が製造販売されています。(JAPIC収載品)
最初に成分分量を見ますと、医療用の1日量は「麻黄5g、杏仁5g、桂皮4g、甘草1.5g」からなっています。 一般用を見ますと、医療用の成分分量と同じですが、比率は同じでも半量処方のものもあります。
効能効果は、一般用は「風邪のひきはじめで、寒気がして発熱、頭痛があり、身体のふしぶしが痛い場合の次の諸症:感冒、鼻かぜ」と統一されていますが、医療用はメーカーにより、一般用の効能と同じのもののほか、「高熱悪寒があるにもかかわらず、自然の発汗がなく、身体痛、関節痛のあるもの或いは咳嗽や喘鳴のあるもの(感冒、鼻かぜ、乳児鼻づまり、気管支ぜんそく)」や「悪寒、発熱、頭痛、腰痛、自然に汗の出ないものの次の諸症:感冒、インフルエンザ(初期のもの)、関節リウマチ、喘息、乳児の鼻閉塞、哺乳困難」など、証(漢方診断の症状からのしばり)を押さえた記載がされています。
用法としては、漢方薬一般にいえます食前、食間の空腹時をうたっています。
さて、ここで「麻黄湯」の出典について述べておきましょう。
中国の後漢の時代(2世紀)に張仲景によって編纂された「傷寒論」にこの処方を見ることができます。傷寒とは「寒気に触れ冒されたのを傷寒と名付ける」「太陽の病(筆者注:病気の罹り始めで症状が体表にある時期)で、あるいはすでに発熱し、或いはまだ発熱しないもので、必ず悪寒し、体が痛み、嘔き、脈が陰陽ともに浮緊なのは、傷寒と名付ける」とあります。
太陽病には、その時の症状により、桂枝湯、葛根湯、麻黄湯など多くの処方が準備されていて、麻黄湯の証の記載は「太陽病で頭痛がし、発熱し、全身が疼き、腰が痛み、骨節(体のふしぶし)も疼痛し、汗が出ず、そうして喘息症状のあるのは、麻黄湯が之を主(つかさど)る。」となっています。
以上のことから、インフルエンザで服用する場合は「インフルエンザに罹った初期で、悪寒がし、高熱が出て、関節などの節々が痛み、咳や鼻みずが出て、かつ、汗が出ていない状態」のときに用いて効果があることになります。
次に、製剤の品質について筆を進めますと、麻黄湯を煎じる時(エキスをとる時)の注意が、傷寒論に述べられています。
「麻黄は節を去り、桂皮は皮を去り、甘草は炙り、杏仁は皮尖を去り、その四味を水九合でまず麻黄を七合に煮つめ、上沫を去って、諸薬を入れて二合半に煮つめ、滓を去って温服させる。寝具を覆って汗ばませる。」
各生薬はそれぞれ修治(しゅうち、しゅち)といった加工をします。
特に麻黄についてお話しますと、麻黄は木賊(とくさ)に似た植物で、竹のような節があります。麻黄には発汗を促す主成分エフェドリンが入っていますが、発汗を抑える成分プソイドエフェドリンもわずかに入っていて、それが節に多いことから節を去ることになっています。また、麻黄を先に煎じるのはエフェドリンが水に溶けにくい成分のための先出法です。
煎じ薬は温かいうちに服用すること(エキス剤は温かい白湯で服用すること)、汗をかかせるために布団を被って寝ていることが肝要だとも記載されています。
日本ではこれら生薬の修治はあまり行われていませんし、麻黄の先出しを行っているところは多くありません。かといってエキス剤の効果が大きく劣化するとは思われません。それよりも、麻黄湯を冷たい水で服用したり、服用後に外出や涼しい部屋でうろうろしたりしていることの方が問題です。麻黄湯を飲み、あとは如何に汗をかかせるかを考えるべきです。
タミフルは病院に行って貰うもらうものですが、漢方薬「麻黄湯」は常備薬として家庭に置いておくことができます。病院へ行く前の対処療法としての服用も一法かと思います。
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