【117話】生乾論(生姜と乾姜とヒネショウガ) (7)
薬食同源のショウガ
私たちは古来より多くの自然の恵みを受けてきました。自然界の動植物を食物として命の糧に、或いは薬物として病気の治療に用いてきました。
特に、東洋においては薬食同源の考え方から、同じ動植物をある時ある食物として、またある時は薬物として用いてきました。ただ、一般的に食物としての動植物は新鮮ななまのものが尊ばれ、薬物としての動植物は乾燥した生薬として用いられてきました。
その中にあって、ナマのショウガは食品としてまた漢方薬物「生姜」として用いられてきた植物です。薬食同源といっても、食物と薬物ではその目的とするところが異なるわけです。市場のショウガのほとんどが食品の目的で栽培され品種改良がなされてきたことから、薬物としては従来のショウガとともに薬理的、臨床的効果の検証をしなくてはなりません。
今まで述べてきましたように、ショウガの栽培品種間の検討結果は、薬物としては小型ショウガは大型ショウガに較べて、より適したものと結論付けました。だからと言って、大型ショウガが全く使用できない訳ではありません。
ナマのショウガを日局「生姜」「乾姜」に換算するとき、現市場のショウガを乾燥すると1/8~1/10になるからと言って、その分量で調剤するのは問題が多いようです。辛味成分含量からみますと、やはり1/4~1/5とした方が適切だと思われます。
まとめ
以上、生姜・乾姜について、薬能の違い、漢方処方における日中の違い、特に日本の漢方製剤での問題点、さらに基原植物としてのショウガの栽培品種の問題、新薬効成分などについて話をすすめてきましたが、最後に、日本の市場に出回っている生姜・乾姜含有エキス製剤について一言述べたいと思います。
云うまでもなく現在の漢方の目を見張る普及は漢方エキス製剤の出現と薬価収載でした。 しかし、多くのエキス製剤が使用されるにつれて、その功罪も論じられてきました。
手軽に服用ができ携帯に便利な剤型は従来の漢方薬のイメージを一掃した反面、煎じ薬と比較すると効き目が悪い、さらに漢方薬にも副作用があると新聞紙上を賑わしています。
「葛根湯のエキス剤はあまり効かない」といった声をよく聞きますが、これは冒頭に述べましたように、葛根湯のエキス製剤中の生姜は乾燥した日局「生姜」で、漢方の乾姜にあたり、発表(発汗)作用が弱くなります。従って、発汗を期待するのであれば、このエキス製剤を服用するときに、ナマのショウガを擦って入れたショウガ湯で服用してみてはいかがでしょうか。
また、葛根湯は汗をかかせることが目的ですから、葛根湯を服用して、寒いところで働いていたり、薄着でいたりの冷す環境では効き目がありません。
エキス製剤の欠点を見極め、さらに高品質の製剤化に努力するとともに、今あるエキス剤をいかに生かしてゆくかも必要なことです。
また、副作用については、熱性疾患に熱薬の「乾姜」が配剤されている製剤を与えるのは問題で、エキス製剤中の生姜は乾姜と読み替えて、服用には十分な注意が必要です。
漢方医療の正しい知識の習得とエキス製剤を含めた漢方薬の適正使用が望まれてなりません。(完)
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