【116話】生乾論(生姜と乾姜とヒネショウガ) (6)

 薬用のヒネショウガ


 漢方で用いるショウガは「ヒネショウガを用いる」と多くの書籍に書かれていますが、このヒネショウガとはどのようなショウガなのでしょうか。
 ショウガの栽培は、秋の収穫期に採掘したショウガ根茎を13程度の恒温倉庫に保存しておき、翌年の春4月頃に適当な大きさに割ってそれを種芋として植栽します。
 5月頃になると、その種芋から新しい根茎が分けつし、茎が地表に顔を出します。次にその最初の新しい根茎から数か所次の新しい根茎が分けつし、それぞれの茎を立たせます。
 6月と7月にさらに分けつを行い、9月になると急激に根茎の分けつと肥大が加速し、11月の収穫期を迎えます。
 焼き魚の妻として添えられる葉ショウガ(芽ショウガ)は、5~6月頃の繊維質が少なく辛味の少ないショウガ根茎に10cmばかりの茎をつけたものですが、漢薬書に子姜(紫姜)と記載のものです。
 さて、ヒネショウガとなりますと「ヒネ」とは「日がたって古くなる」ことを指しますから、秋に収穫して保存をしておいたショウガともとれますし、漢薬書に母姜と書かれている種芋ともとれます。また、十分に肥大した収穫期の根茎とも考えられます。
 一方、中国の薬物書には、姜と乾姜で収穫時期に相違のあることが記載されています。
 姜は晩夏~秋~初冬にかけて収穫するとし、乾姜は姜に較べて収穫時期が」少し遅くなっています。(表5)
 このことを実証するために次の実験を行ってみました。
  


 実験材料にショウガ金時種を用いて4月の種芋を植えたときから隔月に根茎ごとの成分含量を測定し、その比較を行ってみました。
 (写真は10月の金時ショウガの分けつ根茎の名称 1:母姜(種芋) 2:主茎 3:1次茎 4:2次茎 5:3次茎 6:4次茎)


 その結果、辛味成分については、母姜では経時的に少し減少するもののほぼ高い含量を示し、1・2次茎は根茎が急速に肥大する10月頃から高含量を示し、9月以降に分けつする3・4次茎は初めから高い含量を示しました。
 抗コレステロール作用をもつジテルペン類は、母姜は8月、主茎は10月、1・2次茎は12月と経時的に最高含量値を移す傾向にありました。
 また、8月(夏季)に収穫可能な主茎、1次茎あるいは未熟な2次茎の精油成分については、10月に採集される根茎の1/21/3程度しか含まれていないことが判りました。
 以上のことから相対的に言えることは、「ヒネショウガ」とは根茎の部位に関係なく、十分に成熟した根茎全体と考えてよいと思います。
 またの発表散寒の作用が主に精油成分であるとすると、9月より急速な根茎の肥大とともに根茎全体の精油含量の増加がみられることから、姜として使用するショウガ根茎の収穫時期は晩夏から、秋、初冬とする本草書の記載は正しいと思います。さらに、乾姜の去寒温中の作用が主に辛味成分とすると、10月にその含量が最高に達するものの、全体の収穫量が多い子姜は12月頃に最大となることから、姜の採集時期より少し遅い秋から冬にかけて収穫するとする本草書の記載を裏付ける結果となりました。


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