【114話】生乾論(生姜と乾姜とヒネショウガ) (4)

ショウガの乾燥物換算量と品種

 厚労省の一般用漢方承認基準においても記載のある通り、ナマのショウガの代わりに乾燥した姜「日局ショウキョウ」を用いる場合は、1/3/4量を使用することになっていて、多くの漢方の成書にもほぼ同じような記載がなされています。
 しかし、この換算量に疑問の声があがっていて、某大学の漢方研究会の学生たちが、ナマのショウガから日局ショウキョウを作ると、夏場では1/7量、冬場では1/9量になったと報告しています。
 実際に、私もショウガを乾燥して日局ショウキョウを作ってみました。そうしますと、やはり元のショウガの1/81/10量の乾したショウガが出来上がりました。
 それでは、今までの換算量は間違っていたのでしょうか。

 そのためには、ショウガについての市場、現状を見ておかなければなりません。
 8月から10月になると、スーパーの野菜コーナーや八百屋の店頭に色白の大きなショウガが並びます。新ショウガといって今年とれたショウガですが、大きさは赤ちゃんの拳よりも大きくて瑞々しい感じがします。そのままかじっても、サクサクと美味しく食べられます。卸金で下してみますと、ショウガの汁が一杯出て、うまくすりおろすことができません。
 私が幼いころに知っていたショウガと何だか少し違うようです。
 卸金でおろすと栗のようにコリコリしていて、もう少し繊維質も多く、ほんの少し口に入れただけでピリリと辛いショウガはどこへ行ってしまったのでしょうか。
 近頃の食材の変化はショウガも例外でなく、辛味の強いものがよいとされていたショウガから、より柔らかな辛味の少ない食べやすいショウガへと品種が改良されてきました。
 ショウガは姜・乾姜の生薬原料としての利用よりも、大半は蔬菜として食されています。従って、私たちが普段目にするショウガは蔬菜としてのショウガです。蔬菜として食用に供するショウガは次第に大きく柔らかく辛味が少ないものへと改良されてきました。 これらの蔬菜としてのショウガを薬用に使うことは問題がないのでしょうか。

 江戸時代中期から後期の本草書を見ますと「茎基赤シ故ニ紫薑ト云・・・・霜後ニハ根熟シ老薑トナルコレヲ母薑ト云薬食ノ用ニ入ル」、「尋常母薑ノ鮮ナル物ヲ為良ト不用長崎ノ大薑・・・」、「長崎ノセウガ形肥大ニテ佛掌薯(ツクネイモ)ノ如シ・・・薬ニ入ルニ堪ヘズ」との記載があります。
 このことは、現在、市場のほとんどを占める食用或いは薬の大ショウガ系の品種は薬用に該当せず、薬用には小型のショウガを用いていたこと、また、小型ショウガの特徴は「葉茎の基部が赤色」を呈していることが示唆されています。
 大きなショウガ、小さなショウガ、そんなショウガの品種についてもう少し詳しく触れてみたいと思います。


日本ショウガの来歴

 ショウガは熱帯アジアを起源とし世界中に拡がった植物です。日本には従来、ショウガの自はなく、3世紀以前に渡来したものと推定されています。導入初期の品種は少なくとも耐寒性が強く、早、貯蔵が容易な小型或いは中型ショウガだったと断定されます。
 といいますのは、ショウガは元来多年生の植物ですが、日本の気候では花が咲かず実がなりません。また、日本の寒い冬にあいますと地上部は枯れ、地中の根茎や根は腐ってしまい、冬を越すことができません。従って、霜の降りる前に掘り取って洞に入れ、一定の温度のもとで保管をし、それを種芋として来春に植え付けています。

 古い時代に伝来した品種を「在来種」と表現しますと、これらの「在来種」は既に8世紀(平安時代)までには「久礼乃波之加美(クレノハジカミ)」の和名で栽培化が定着し、「延喜式」(928年)によれば主な産地として遠江国(静岡県)があげられています。
 近世になりますと、従来の小型ショウガは大型ショウガに較べて乾燥歩留りがよく、その乾燥物は堅実で、辛味性が強いことから、香辛料、チンキ剤、シロップ剤などの原材料として高く評価され、海外へも輸出されるようになりました。特に、明治時代に産量がピークを迎えます。
 その後、国内における大型ショウガの台頭、加えて輸出不振を機に、小型ショウガの栽培は衰退の一途をたどり、現在では東海から関東北部の限られた地域で、料理のツマとして添える葉ショウガや矢ショウガとして僅かに栽培しているに過ぎなくなりました。
 一方、「長崎の大姜は薬用に用いず」とされた大ショウガの最初の伝来は江戸中期の「広東ショウガ」と推定されますが、本格的に大型ショウガの栽培が始められたのは明治以降であり、台湾経由で「オタフク系」の品種が導入され、最終的にこれが長崎に定着した品種といわれています。大型ショウガが長崎に導入されて以来、品種改良が行われたことも手伝い、順調にその産量並びに販路を拡め、現在、九州、四国に産するショウガのほとんどが食用を前提とする大型ショウガになっています。
 現在日本で栽培されている主だった品種を表(3)にまとめてみました。


 日本で栽培されている多くの品種から薬用ショウガとして適正のある品種を確定するため、薬の主産地のひとつである高知県窪川の同じ畑で、入手できた7種のショウガを同じ条件で栽培してみました。写真は10月に掘りあげたときのショウガ根茎です。

           

 本草書の記載から、薬用ショウガとして(A)の小型ショウガ「金時」種が、茎基の紅いことでその形態の特徴をよくあらわしています。(B)は小型の「谷中」、(C)は中型の「三州」です。また、(D)の「オタフク」種、(E)の「土佐一」種、(F)の「カンボ」種、(G)の「ジャンボ」種は「金時」種と較べると6~8倍もの大き
さがあり、これらの大型種は現在のショウガ市場の大半を占めている品種です。

 ここで、これら7種のショウガを自然乾燥してみました。その結果は表(4)のとおりです。金時、谷中の小型種は1/31/4量の乾燥収量となり、従来から言われています乾燥した「姜」を用いるときはナマのショウガの1/31/4量を用いるとの記載に合致します。しかし、大型ショウガは1/81/10量となり、多くの問題を残す結果となりました。

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