【112話】生乾論(生姜と乾姜とヒネショウガ) (2)
日中の生姜と乾姜
中国ではナマのショウガを生姜(ショウキョウ)として、乾燥したショウガを乾姜(カンキョウ)として用いています。一方、日本では「ショウガ Zingiber Offinale の根茎を乾燥したもの」をショウキョウとする日本薬局方の漢名に『生姜』と『乾生姜』が記載されているため、話が少しややこしくなっています。このことは生薬名と漢方薬物名が混乱して使用されているためです。
表(1)にまとめましたように、現代の日本漢方では「生姜」に「ナマのショウガ根茎」を使用し、「乾姜」に「乾燥したショウガ根茎」または「蒸して乾燥したショウガ根茎」を使用する人と、「生姜」に「ナマのショウガ根茎」を使用するか「生のショウガ根茎の1/3~1/4量の乾燥したショウガ根茎」を代用し、「乾姜」に蒸して乾燥したショウガ根茎」を使用する人に分かれています。
中国では「蒸して乾燥したショウガ根茎」は「乾姜」としては使用しません。全く別の規定で、使用する目的も違っています。
このように、生姜・乾姜には、用法・名称上の混乱が見られます。もし、これらの用法・名称上の違いが薬効上問題がなければよいのですが、違いがあるとすると、この混乱は正さなくてはなりません。
a:生(ナマ)の Zingiber officinale の根茎 b:乾燥した Zingiber officinale の根茎 c:蒸して乾燥した Zingiber officinaleの根茎 d:第15改正日本薬局方 e:現代日本で行われている漢方医学 f:現代中国で行われている中医学
生姜と乾姜の薬能
ナマのショウガと乾燥したショウガの外観は明らかに違っています。しかし、漢方薬物としての観点からはその薬能・薬効に違いがあるかどうかが問題ですから、最初にこの問題から考えてみましょう。
ショウガ根茎の薬用としての出典は非常に古く、紀元前2世紀~2世紀頃に書かれた中国の書籍「神農本草経」の乾薑(ショウガの乾燥品)に始まります。
「乾姜主胸満、欬逆上気、温中、止血出汗、通風湿痺、腸澼下痢」と記し、その後に「生者尤良」と記載しています。この当時は、乾燥したものとナマのものとの薬能にはあまり違いがなかったようで、ただ、ナマのものの方が薬効的には優れていると述べています。
しかし、時代が下って、後漢の「名医別録」には乾姜と生姜が独立した生薬として記載されています。
「寒冷腹痛、霍乱、腸乱、風邪、諸毒、皮膚間桔気、止唾血」と乾姜の薬能をあげ、「主傷寒、頭痛、鼻塞、止嘔吐」と生姜の薬能をあげています。
長い時代の中で、ナマのショウガと乾燥したショウガの使用経験を重ねるにつれて、それらの薬効が区別されてきたようです。
さらに時代を経て、唐の「薬性論」では、「治腰腎中疼冷、通四肢関節、開五臓六腑、去夜多小便」と乾姜の薬能を述べ、「主痰水気足、下気」と生姜の薬能を述べています。
一方、日本では徳川時代の「一本堂薬撰」には、「止嘔、開胃、発汗、可相互通用」と生姜と乾姜の共通の薬効を述べた後に、「嘔家生姜尤良」と生姜を嘔吐の聖薬であるとし、「挽回元気、温中、止瀉」は乾姜でなければならないとしています。
また、後世に強い影響を与えた吉益東洞の「薬徴」には、生姜の記載はありませんが、東洞の弟子の村井琴山の「薬徴続編」には、生姜は「主治嘔、故兼治乾嘔、噫、噦逆」、乾姜の主治は「桔滞水毒」と述べられています。
これらの書籍を含めた臨床経験から推考できる生姜・乾姜の薬効は次のようにまとめることができます。
1.調味、解毒作用
2.発表(発汗)作用
3.鎮嘔、鎮噦(シャックリ)作用
4.去痰、鎮咳作用
5.鎮痛作用
6.気鬱を巡らす作用
7.活血(駆瘀血)作用
8.温中作用
9.止瀉作用
これらの作用は生姜・乾姜の両方が持っている作用ですが、この中で、乾姜が主となる薬能は「鎮痛、温中、止瀉」作用で、ショウガが主となる薬能は「調味・解毒、発表(発汗)、嘔吐、気鬱」作用です。
言い換えますと、生姜は嘔吐の聖薬、発汗解熱の温薬で、乾姜は更に温める作用が強くなった熱薬ということになります。
このように、生姜と乾姜は薬効が違っていますから、生姜とは何か、乾姜とはどのような薬物かをはっきりさせる必要があります。
生姜と乾姜の薬能
ナマのショウガと乾燥したショウガの外観は明らかに違っています。しかし、漢方薬物としての観点からはその薬能・薬効に違いがあるかどうかが問題ですから、最初にこの問題から考えてみましょう。
ショウガ根茎の薬用としての出典は非常に古く、紀元前2世紀~2世紀頃に書かれた中国の書籍「神農本草経」の乾薑(ショウガの乾燥品)に始まります。
「乾姜主胸満、欬逆上気、温中、止血出汗、通風湿痺、腸澼下痢」と記し、その後に「生者尤良」と記載しています。この当時は、乾燥したものとナマのものとの薬能にはあまり違いがなかったようで、ただ、ナマのものの方が薬効的には優れていると述べています。
しかし、時代が下って、後漢の「名医別録」には乾姜と生姜が独立した生薬として記載されています。
「寒冷腹痛、霍乱、腸乱、風邪、諸毒、皮膚間桔気、止唾血」と乾姜の薬能をあげ、「主傷寒、頭痛、鼻塞、止嘔吐」と生姜の薬能をあげています。
長い時代の中で、ナマのショウガと乾燥したショウガの使用経験を重ねるにつれて、それらの薬効が区別されてきたようです。
さらに時代を経て、唐の「薬性論」では、「治腰腎中疼冷、通四肢関節、開五臓六腑、去夜多小便」と乾姜の薬能を述べ、「主痰水気足、下気」と生姜の薬能を述べています。
一方、日本では徳川時代の「一本堂薬撰」には、「止嘔、開胃、発汗、可相互通用」と生姜と乾姜の共通の薬効を述べた後に、「嘔家生姜尤良」と生姜を嘔吐の聖薬であるとし、「挽回元気、温中、止瀉」は乾姜でなければならないとしています。
また、後世に強い影響を与えた吉益東洞の「薬徴」には、生姜の記載はありませんが、東洞の弟子の村井琴山の「薬徴続編」には、生姜は「主治嘔、故兼治乾嘔、噫、噦逆」、乾姜の主治は「桔滞水毒」と述べられています。
これらの書籍を含めた臨床経験から推考できる生姜・乾姜の薬効は次のようにまとめることができます。
1.調味、解毒作用
2.発表(発汗)作用
3.鎮嘔、鎮噦(シャックリ)作用
4.去痰、鎮咳作用
5.鎮痛作用
6.気鬱を巡らす作用
7.活血(駆瘀血)作用
8.温中作用
9.止瀉作用
これらの作用は生姜・乾姜の両方が持っている作用ですが、この中で、乾姜が主となる薬能は「鎮痛、温中、止瀉」作用で、ショウガが主となる薬能は「調味・解毒、発表(発汗)、嘔吐、気鬱」作用です。
言い換えますと、生姜は嘔吐の聖薬、発汗解熱の温薬で、乾姜は更に温める作用が強くなった熱薬ということになります。
このように、生姜と乾姜は薬効が違っていますから、生姜とは何か、乾姜とはどのような薬物かをはっきりさせる必要があります。
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