【018話】人間動物園
大都会は文化的な生活をエンジョイさせてくれる空間です。
しかし、ひと昔前であれば、すぐに行けた筋向いの八百屋に、今では、階段を上り、陸橋を渡り、地下街にもぐり、いやはや大変な労力と時間がかかります。それではご不便でしょうから、エスカレーターにエレベーターをお付けしましたと言われてもさほどうれしくもありません。
文明とは人間を上下させることだと、マクルーハン先生はおっしゃいますが、文明とは疲れるものですね。
一時、「アスファルトジャングル」といって、大都会の荒涼とした人間関係を言い表すのによく使われたことがありますが、大都会はジャングルのような自然環境にあるのではなく「人間動物園」だと、イギリスの動物行動学者デズモンド・モリス博士の名言です。
動物はみな一定の居住空間の中で生きてゆくように進化してきたのですが、動物園の檻の中のように、極端に狭められた空間に押し込められて生活しなければならなくなったのが都会の人間なのです。
大都会の閉所や狭所はストレスを起こさせます。抜け出そうとしますと、電車はラッシュで、高速道路は渋滞、そして郊外観光地は満員です。それでも、少しの緑と蝶々が一匹二匹飛んでいれば、自然はいいなあと、少しはストレスもなくなって、人間動物園の檻の中へとお戻りです。
利き酒をしている人、ビールをジョッキで何杯飲めるか賭けている人、お蕎麦の早食い競争に挑戦している人、会費制の宴会で元を取ろうと鍋の底をさらっている人、時間つぶしに南京豆をかじっている人。
これらの人たちはみな、空腹だったり、のどが渇いていたりしている訳ではありません。
文明とは、人間の行動を本来の目的を違えて多様化してゆきます。かといって、暴飲、暴食でおなかを壊した人が、偉大な文明人とは間違っても思わないでください。
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