【090-3/9話】甘草の故郷を訪ねて/カンゾウを掘る

 陝西省、内蒙古、寧夏の甘草を見る(9月23日)

 


 目覚め

 聞き慣れない朝の音で目が覚めました。ザクザクザク、ザクザクザク。何かを擦っているような、砂を踏むような音です。カーテンを開けると、夜明け前の薄明かりの中を子供達が行進をしています。ホテルの隣は学校だったのです。

 背筋を張って、膝を伸ばし、腕を大きく横に振って縦列で行進をしています。軍人が大きな声で指揮をしています。軍事訓練かと思いましたが、10月の建国記念日行事の練習のようです。

 

  アコード壊される

 玄関に下りると、前庭が騒々しい。Oさんの顔色が青白い。アコードの左フロントのバンバーが壊れています。昨夜遅くに当て逃げされたらしい。これからの行程に一抹の不安がよぎります。修理が出来るのでしょうか、修理が間に合うのでしょうか。

午前中、別の車で甘草の倉庫と加工厰、そして甘草の栽培地を見に行く事になりました。 

 甘草倉庫の見学


甘草の乾燥風景
 
 倉庫の中庭には、丸太の上に数十本を一束にした甘草が並べられ、天日乾燥が行われていました。掘り上げた甘草をそのまま干すと曲がってしまうので、何本かを束ねて真っ直ぐにして乾燥するのだそうです。太さによって等級別に分けられています。東北甘草の原植物は ウラルカンゾウGlycyrrhiza uralensis で根頭部(瘤)がありますが、ここでの西北甘草は同じ原植物ですが根頭部がありません。

 これは、もともと根頭部がないか、若しくは頭部を除去し調製したものです。ただ、一部、根頭部の付いた甘草の束も見受けられました。倉庫には、乾燥を終えた甘草が山積みにされています。同じく砂漠の薬の麻黄も保管されていました。

 定辺/栽培甘草を掘る

 倉庫を後にして甘草の栽培地に向かいます。栽培地は個人所有のものとのことで、試掘の許可を得て、現場へと急ぎました。ゴビ灘が広がる一角で甘草を掘り始めました。地上部は花が終わり実がなっています。マメ科の特徴である莢に毛が密集していて、その褐色の莢はウラルカンゾウの特性を如実に現しています。

 当地の栽培甘草の種子は東北地方から購入し、直播きを行い、若干の肥料を投入するとの事でした。

 甘草の根は真っ直ぐに地中に伸びるため、その掘り起こしには相当の労力を強いられます。種を播いて4、5年で収穫されますが、その根の様子は同じ太さの野甘草とは違って、地表部から次第に細くなっていて、之が栽培甘草の特徴の一つでもあるようです。甘味が野と比べて少なく、グリチルリチン含量が少ないと云われていますが、栽培技術の改良でこの問題は解決されていくことでしょう。

  砂からの脱出

 近くに野甘草があると聞いて、少し砂漠の奥に移動することになりました。

 「さあー、出発!」とエンジンをかけたのですが、日産車の車輪が砂に埋もれて動きません。押したり揺すったり、やっとのことで抜け出しましたが、甘草の調査は、予期していたとおり、砂との闘いになりました。

 甘草掘りは地中1メートル、時には2メートル以上を掘りすすめます。そんなことで、年に何人かが砂に埋もれて命を落とすそうで、今年も少し前にその事故が新聞に報道されていたと聞きました。

 定辺の野生甘草に出会う

 野の甘草が所々に見えてきました。これらもウラルカンゾウです。掘り上げた野甘草の良い個体になかなか出会いません。案内人の一人が「髪菜」を摘み始めた。昨晩の食卓にあがった野草です。なかなかの味だったと記憶していますが、結局、彼は、甘草はそっちのけで、最後までこの野菜採集に没頭していました。

 別の案内人が道端の草を指さしました。最近、エイズに効くと話題になった植物だと云います。名前を聞き忘れましたが、マメ科の植物でした。

 農夫と甘草



 そこへロバに乗ってふらりと近づいてきた農夫に甘草の掘り上げを頼むことにしました。さすが手慣れた様子で、2メートルほど掘って、見事な一本を掘りだしました。途中3鍬ほど入れさせてもらって、その感動の一瞬をカメラに収めてもらい、それから、ゴビの大地に立って、甘草を高々と揚げて、もう一枚カメラに収まりました。そのとき、蜥蜴が1匹、横眼で私を見下たように一瞥して、通り過ぎたのです。

 Kさんが農夫に御礼にと100元を手渡すと、彼は、自分の庭にも野甘草があるので掘ってやると云います。庭のリンゴも自由に食べてくれとも云います。やはり現ナマの力はすごいと感じました。

 後で、当地の農夫の日収が15から20元と聞きました。100元は1週間の収入にあたり、数本の甘草掘りの収入としては破格の金額だったわけです。彼はこのあと、内蒙古「前旗」地区まで同行してくれたのです。(続)

 


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