【088話】朝型人間・夜型人間 

 



 斬新なアイディアや緻密な企画がまれるのは、私たちの柔軟な頭からです。ところが、この柔軟な頭がいつも同じように働いているとは限りません。睡眠時間、考える時間やそれらの持続時間など、人それぞれ頭の働き具合は違っています。

 ある日、テレビを見ていますと「一日4時間以上睡眠をとる人間はバカか蓄膿症だ」と功成し遂げた実業家がおっしゃるのを聞いていて、蓄膿症気味の私は納得しかけたのですが、一方では「8時間以上眠らないと一日中調子が出ない」と言われる著名な推理作家もおられて、一概にナポレオンを真似てもうまくいくとは限りません。

 睡眠時間だけでなく、深夜針の落ちる音ひとつ聞こえても思考の妨げになる人がいるかと思えば、モダンジャズを聴きながらのほうが創作活動がはかどる御仁もいます。

 また、朝冴える頭もあれば、深夜にならないと回転しない頭もあり、これがいわゆる「朝型」「夜型」、いかえると「5時まで人間」と「5時から人間」と言われる頭の典型的な二大タイプです。

 これまで、人間の思考力は、一日中で最も体温の高くなる、つまり新陳代謝の盛んになる午後5時頃がピークであるとの説が大勢を占めていましたが、ドイツ・ミュンヘン大学のドーリン教授の研究によって、思考力のピークはむしろ午前中にあることが分かってきました。

 一定の明るさのもとで、人間の瞳孔を調べてみると、大多数の人は一日のうちで、午前中が最も大きく開いており、夕方から夜にかけて縮小してくるとの事実が見出されました。瞳孔が開くのは心身のアクティビティが高まった時ですから、外界に対する注意の集中力が午前中にピークになることを示しています。

 また、人間の活動源になっている血中糖分量も午前中が最高で、午後から夕方にかけて次第に減少し、真夜中には最低になることが知られています。肉体の活動力も午前中がピークです。これらのことから、最も頭の冴えているのは午前中ということになります。

 しかし、朝型か夜型かは長年の活環境や習慣、心理的な動機で形成されてきたものですから、一朝一夕に変えられませんし、無理に変える必要もありません。ただ、理学的観点だけから考えますと、「夜型」より「朝型」のほうが理想的ではあるようです。


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