【077話】イワシとタイ 

     

 「エー、昔から、イワシ7度洗えばタイの味、なんてことを申しまして、イワシの不必要な油を取り去りますと、タイに劣らぬ味になるってことでして・・・・」と落語のまくらで語られます。

 タイは持って生まれた優美な姿と色合いと上品な味わいで、日本では魚の王様といわれています。一方のイワシは、高い栄養価があるにもかかわらず、まれた時から、サンマやマグロ、カジキに追いかけまわされ、年に一度の節分のお務めはあるものの食膳ではあまりいい顔をされていません。

 元来、味覚は各人の好みによるもんで、タイをありがたがるのは世界中で日本人だけのようです。地球の裏側までいって獲って食べるほどの価値があるもんでしょうか。「めでたい時にお頭つきのタイ」と語呂合わせで祝っても、「死にたい時は腹切りタイ」と云うと縁起の悪い魚になってしまいます。ましてお頭つきのタイは、ヨーロッパの人たちは「ギョ」と目をむいて箸やフォークをつけようとしません。私たちが豚の丸焼やウズラの姿煮などを出されて食指が動かないのと同じように、彼らには魚は頭を取って食膳に出すものとされています。

 食習慣であれ、習慣といったものは、他民族の習慣との比較において考えれば、新しい発見があるようです。

 一方、飽食気味の日本では、食材がどうのこうのと云っておれない飢餓大陸アフリカの人たちの混迷が分らないかもしれません。世界が歪み始めています。 

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