【066話】便秘と乙字湯

               
 ある日、仲間で雑談をしていた時「香港のドラッグストアに便秘薬が少ない」という話になりました。日本の伝統薬の中には、胃腸薬と並んで多くの便秘薬があります。「七ふく」「百毒下し」「毒草丸」などの伝統薬をはじめとして、多くの便秘薬が薬局・薬店に並んでいます。

 日本人には、刺身などの生ものや塩文化の冷材食物の摂取や多忙な活環境、冷えが起こる自然環境の影響で便秘症が多くなり、一方、香港人は温暖な環境と温材料理の影響で腸が活発に動き便秘を少なくしていると、その場の結論になりました。

 便秘と言えば、江戸時代の水戸藩の漢方医師、原南陽が創薬した「乙字湯」についてお話をしておかなくてはなりません。
 南陽には多くの著作がありますが、中でも「叢桂亭医事小言」「砦草(トリデグサ)」などがよく知られています。
 「砦草」は軍陣衛生や飲食・飲水についての諸注意、救急法などが書かれたわが国最初の著書です。
 「叢桂亭医事小言」には南陽の蔵方が集められています。特に、汎用する処方には「甲字湯」「乙字湯」「丙字湯」「丁字湯」・・・・というように十干を処方名として整理がなされています。「乙字湯」は第2番目の処方となります。
 「乙字湯」は痔の薬としてあまりにも有名です。痔には便秘がつきもので、従って、「乙字湯」には瀉下作用のある「大黄」という生薬が配剤されています。

 日本は世界でも冠たる痔疾王国です。大痔主様もたくさんおられ、これがまた、私は痔主だと宣言されませんし、なかなかお医者さんにかかったり、薬剤師に相談することができずに悩んでおられる方が多いようです。
 便秘から痔になることも多く、痔には便秘対策は欠かせません。痔疾治療の漢方薬のファーストチョイスは「乙字湯」ですが、程よい通便が大切ですから、大黄の効き目や個人差による効果の現れ方が違いますので、できれば漢方便秘薬「大黄甘草湯」の併用が必要になることもあります。

 肛門の薬方を黄門様と同じ水戸藩の原南陽が創方したことは、双方になんの関係もないのですが、ついつい黄門様の腸の調子はいかがなものであったかと想像してします。
 万一、そうであったとしても、老齢の黄門様には高齢者の腸機能衰退を補助する「麻子仁丸」や「潤腸湯」といった別処方を考えた方がよいのかもしれませんが。

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