【061話】スイセン(冬)生薬名:水仙根(スイセンコン)
スイセン(水仙)は、冬~春に下向きにラッパ状の花を咲かせるヒガンバナ科スイセン属の耐寒性球根の植物です。
スイセンはスペインのカナリ―諸島原産で、ヨーロッパから、小アジアを経由して中国に渡り、日本に伝わりました。
スイセン属の属名ナルキッソス(Narcissus)は、ギリシャ神話で美青年ナルキッソスが泉の水面に映った自分の姿に恋して、かなわぬ思いを抱いたまま衰弱死した場所から生えた花とされ、その名前が付けられました。自己愛ナルシストの由来です。
スイセン(水仙)は多くの品種があり、日本でよく見かける日本水仙(ニホンズイセン)は2~3月中旬、ラッパズイセン(喇叭水仙)は4~5月中旬に咲きます。 水仙根に含まれるリコリンやプソイドリコリン、タゼテインなどのアルカロイドは有毒で、誤食すると嘔吐、腹痛、脈拍頻微、下痢、呼吸不整、体温上昇などを起こし、昏睡、虚脱、痙攣、麻痺などを経て死に至ることがあるので、決して服用してはいけません。
外用薬として、はれもの、乳腺炎、乳房炎や肩凝りに、生の球根をすりつぶして、小麦粉と酢でねり、紙に厚くのばして貼ります。中国では、花を水仙花といい、活血調経薬として子宮の諸症、月経不順に用いられているようですが、花にもアルカロイド成分を含んでいますので、使用に際しては注意が必要です。
スイセンは多くの詩歌に歌われていますが、なかでもワーズワースの「水仙」の詩は有名で、妹と旅したときに出会った水仙の群を、感動の中で思い出しつつ書いたとされています。壺齋散人訳のワーズワース「水仙」を載せておきました。ご詩味ください。
谷間をただよう雲のように
一人さまよい歩いていると
思いもかけずひと群れの
黄金に輝く水仙に出会った
湖のかたわら 木々の根元に
風に揺られて踊る花々
銀河に輝く星々のように
びっしりと並び咲いた花々は
入り江の淵に沿って咲き広がり
果てしもなく連なっていた
一万もの花々が いっせいに首をもたげ
陽気に踊り騒いでいた
湖の波も劣らじと踊るが
花々はいっそう喜びに満ちている
こんな楽しい光景をみたら
誰でもうれしくならずにいられない
この飽きることのない眺めは
どんな富にもかえがたく映る
時折安楽椅子に腰を下ろし
物思いに耽っていると
脳裏にあのときの光景がよみがえる
孤独の中の至福の眺め
すると私の心は喜びに包まれ
花々とともに踊りだすのだ
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