【060話】黄連(おうれん)の花とどんど焼き
日本中が凍てついた小正月の朝、近くの神社の「どんど焼き」に出かけようと、玄関を出た時、黄蓮の小さな白い花が咲いているのに気づきました。北国ではまだ雪の下で耐え忍んでいる頃なのに、ここ堺では、早くも小首を傾げて微笑んでいます。
林間に咲く黄蓮の花は目立たないのか、あまり詩歌に詠まれていません。やっと見つけたのが、つぎの与謝野晶子の歌です。尼僧の妖艶さをも感じる歌ですが、黄蓮の花が秋近くに咲いているのは、ちょっと解せない感があります。
オウレンの名は漢名「黄蓮」の字音で、その根茎が黄色の数珠を連ねた形からの命名です。日本では古くは「カクマグサ」、転じて「カクモグサ」と呼ばれていました。そう思えば次の歌に思い当たります。ジーと耐え忍んでいる恋のつらさが「カクモグサ」の風情に似て、心情が伝わってくる歌です。
生薬の黄蓮は、もとは中国のシナオウレンの根茎を掘り起こし、長くて細い根を切って乾燥したものですが、日本のオウレンも生薬として使っています。
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葉が細くなったセリバオウレン、コセリバオウレンは太平洋側にも産します。特に、栽培されるオウレンは、セリ葉型のオウレンで、鳥取県智頭町の林間直播栽培や兵庫県丹波地方の畑地栽培が有名です。因州黄連、丹波黄連とも呼ばれていますが、現在ではかなりの減産と場所によっては栽培がなされていないところも出てきました。
昔、催承元という人が一死刑囚を助けてやったことがありました。そして、その死刑囚が病死した後のこと、催は一年以上も目の内障で苦しんでいました。ある日、夜も更けたころ、縁先の切石の隅でコオロギが鳴いています。声をかけると、「私は以前助けられた囚人です。恩返しにきました」といって「羊肝丸」という漢方薬を教えました。崔はその漢方薬を服用して数カ月もしないうちにもとの視力を回復しました。その処方は黄連末一両に子羊一頭分の肝臓を丸薬としたものでした。それ以後、黄連は眼病に効があるとして、使われてきたのです。
「どんど焼き」は「どんと」「とんど」とも呼ばれ、1月14日の夜または1月15日の朝に、その年に飾った門松や注連飾り、書き初めで書いた物を持ち寄って焼きます。その火で焼いた餅を食べ、注連飾りなどの灰を自宅の周囲にまくとその年の病を除くと言われています。また、書き初めを焼いた時に炎が高く上がると字が上達するとも言われています。最近は、危険を防止する為か、「どんど」のまわりを金網で囲って、焼けた餅や灰を持ち帰ることができないようになっています。習字の燃えた炎も、上の金網に遮られて大きくなりません。これでは、病も除けませんし、習字もあまり上手にならないようです。
「どんど」には 門松や注連飾りによって出迎えた歳神を、それらを焼くことによって炎と共に見送る意味があるとされていますので、神様だけには失礼のない配慮はできています。
そういえば当時、「たき火をしよう」とは言わなかった。「とんとしよう」と言っていたのは、「どんど」のことだったのですね。
年末年始の胃疲れを黄連の入った胃腸薬で整え、小正月のどんど焼きで神を見送って、明日からは平常の生活に戻りましょうか。
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