【037話】正岡子規とへちま忌

 

正岡子規

 正岡子規は1867年10月14日1902年9月19日に肺結核で亡くなりました。享年35歳でした。子規の辞世の句は「へちま(糸瓜)」を詠んだ三句です。

  「糸瓜咲いて 痰のつまりし 仏かな」

  「痰一斗 糸瓜の水も 間に合はず」

  「をととひの へちまの水も 取らざりき」

  結核はのどの奥に痰(たん)が詰まる苦しい病気ですが、糸瓜(へちま)の茎から採取する水は、その痰を切るのに効果があり、特に陰暦の8月15日に水を取るとよいと言われています。

 これらの句は、死期を悟った子規が、ヘチマの効果も間に合わずと自分を客観視しているところに凄みを感じます。子規の命日の9月19日は、「糸瓜忌」と呼ばれ、季語になっています。

  ヘチマ Luffa cylindrica (L.) Roemはウリ科ヘチマ属に属します。

 ヘチマは「世の中は何の糸瓜と思へども ぶらりとしては暮されもせず」と詠まれ、糸瓜は何の役にも立たないようにいわれていますが、先ほどあげた子規の句からもわかるように、咳・去痰薬として用いられますし、利尿薬としての効果もあります。

 また、糸瓜水1000㏄に硼酸2g、アルコール、グリセリン20㏄を溶かすとヘチマ化粧水(ヘチマコロン)になり、現在も販売されています。

 果肉を去り繊維だけにした実は乾燥し束子(たわし)や靴の中敷きとして利用されています。

  沖縄では、「ナーベーラー」と呼び、重要な夏野菜の一つです。ウリ科の植物ですので、触感はほとんど、キュウリと同じでさっぱりした味が楽しめます。

  さて、「へちま」はなぜ「へちま」と呼ぶのでしょう。

 本来の名前は果実から繊維が得られることからついた糸瓜(いとうり)で、これが後に「とうり」と訛りました。「と」は『いろは歌』で「へ」と「ち」の間にあることから「へち間」の意で「へちま」と呼ばれるようになりました。今でも「糸瓜」と書いて「へちま」と訓じます。

 また、「ナーベーラー」は、一説には“なべあらい(鍋洗い)”に由来するといいます。

 

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