【072-4話】中国湖南省に南部黄柏を訪ねて/ついでに厚朴を見る  

              張家界国家森林公園の林立する奇岩

 森林公園、その奇岩に目を見張る (6・11) 

 森林公園へ
 昨日、無理して「張家界」まで戻ったお陰で、半日の時間の余裕ができました。そこで、2日目キャンセルした森林公園を訪ねることにしました。
 森林公園は正式には「張家界国家森林公園」と呼び、中国重点風景名勝区「武陵源」に位置します。日本では、さしずめ国立公園特別自然地域といったところでしょうか。数年前より観光都市として開発が進められ、今回宿泊した「張家界国際酒店」もオープンしてまだ一年目の新しいホテルです。

ホテル前庭の池で、「黄連」の根の土砂を洗い落とし、荷物を整えていますと、熊さんのハイエースが到着しました。そこから可愛い小学生くらいの女の子が降りてきました。てっきり熊さんの娘さんかと思ったのですが、公園のガイドとのことです。歳を聞くのは躊躇したのですが、19歳の白族で、英語は話すのですが、日本語も勉強したいそうで、この日は観光ガイドをすることよりも、日本語の勉強に忙しかったようです。ホテルから約一時間、整備された観光道路を走ります。入場料一人60元を払い園内へ。ここ、武陵源はすべて見るのに一週間はかかるといいます。今回は「黄石塞」と「金鞭渓」を巡ることになりました。「黄石塞」は最もポピュラーなコースです。往復70元のロープウェイで6分、着いた頂上はかなり広く、駅から順に巡って奇岩を展望します。その風景はまさに水墨画山水の世界でした。道端にはアマドコロ、ホウチャクソウがあり、合歓の木の花が満開で遠くの奇岩に見とれ、地の花々に目を転じ、眼の毛様体も忙しいことです。

 昼食を摂って、「金鞭渓」を歩くことになりました。河に沿って整備された石畳の遊歩道が続きます。右に左に奇岩の命名由来の説明を受けるのですが、中国の歴史に不案内の者にはあまり面白みがありませんでした。

                 霊芝、何首烏、冬虫夏草?の土産物  

 食後の軽い散歩かと思っていたのですが、3時間の長時間歩行となりました。何せ中国は大きいのです。フウロウソウ、ツリフネソウ、ショウマの仲間が迎えてくれます。
 途中で、霊芝、何首烏、冬虫夏草が土産物として売られています。どれもべらぼうに高く、中でも冬虫夏草は偽物で、「トウチュウカソウあります」と日本の観光客に売りつけています。
 

 「張家界」を後に「上海」へ
 上海行きの搭乗にはまだ時間があるので、市内の羅さん経営の「龍泉賓館」で休憩をさせてもることにしました。夕食には早いし、機内食も出ることだし、お茶だけ頂いて空港へと向かいました。
 張家界空港は、来た時は真っ暗闇な非常門からの出入りでしたので気がつかなかったのですが、中国の地方空港としてはそれなりに立派な体裁を整えています。
 今回、時刻通りに東方航空5312便は午後7時45分離陸しました。ホッとして、急に空腹を覚えたころ、食事が出されたのですが、ビスケットまがいの軽食に一
同がっくりでした。上海は虹橋空港に到着しました。

 浦東のホリデーイン
 明日、関空へは浦東空港から出発するため、少しでも空港に近い浦東地区の「假日酒店」(ホリデーイン)に宿をとりました。チェックインを終えて、中国での最後の晩餐を摂ることになりました。午後十一時、近くに飲食店はなく、ホテル内の閉店間際のレストランに無理をお願いして、注文を聞いてもらいました。簡単なものしかできないとのことで、Mさんはハンバーグセット、他の人たちは上海炒麺(焼きそば)を注文しました。
 待つこと暫し、出てきた量に驚きました。馬鹿でかいハンバーグ、大皿山盛りの焼きそば、見ただけで空腹のお腹の具合がおかしくなります。焼きそばは、最後の残り油を全部使ったのではないかと思われる油の使い方で、今まで快調(快腸)だった胃腸を混乱に陥れたのです。それでも、残さず食べ終えて、中国最後の晩餐会が終了しました。ホテルの周りには明かりがほとんどなく、不夜城上海の夜がこんなにも静かに終わるのも珍しく、早々に真新しい豪華なダブルベッドに身を沈めました。
 明日は日本です。

 エピローグ/黄柏の現状
 日本市場において流通する黄柏が近年大きな様変わりを見せてきています。これは、資源としての日本のキハダ 
Phellodenndron amurense が枯渇してきたことにあります.

 このキハダを基原とする黄柏は、日本産は単に「黄柏」、中国産は「東北黄柏/関黄柏」そして北朝鮮産は「鮮黄柏」として市場に流通しています。
 一方、シナキハダP.chinense を基原とする黄柏が「南部黄柏/川黄柏」として市場を拡大しています。
 以前、黒竜江省ハルピンで街路樹として植えられていたキハダを見たことがありますが、現在植栽されているとの情報がほとんどなく、今後の需要を賄えるか不安のあるところです。
 そこで、中国の東北黄柏と南部黄柏の相対的な比較を行い、その問題点と今後の対応についてまとめてみました。
 
 一般に南部黄柏は東北黄柏と比較すると、有効成分のベルベリン含量が高く、そのことにおいては品質の高いものです。また、性状において、線維性が少ないため粉末になり易く、粉体に細長い繊維が混入することが少ないとも言われています。(逆の説もあるようですが)
 東北黄柏、鮮黄柏、黄柏(日本)の供給が少なくなっていく現況の中で、製剤中のベルベリン含量規格の規定のために、東北黄柏と南部黄柏とと混合しなければならない状況が起きています。
  1.南部黄柏のみを使用し、ベルべリンの含量規格の一部変更申請を行う。
  2.ベルべリン含量の低い南部黄柏を使用する。黄柏の部位により含量が異なるので、生産時に分別する。
    
3.原料が枯渇するまで現況の混合品を使用する。


天産物である生薬の資源は天候や災害の影響を大きく受け、需要と供給のバランスが崩れ、価格の暴騰を招き、時には価格の下落が起こり、生産や採算がなされなくなって、その後の供給に問題を生じることもでてきています。

   また、一般に生薬の産地は低賃金の低開発地が多く、それにより価格の安定がなされているのも事実です。しかしこのことは長くは続かないでしょう。

   黄柏は山間部に栽培され、採集には10数年の歳月を要する植物のため、今後価格の影響が大きくなる薬のひとつと思われます。ただ、暫くは大きな価格変動はないと思われます。(了)

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